先日、車を運転していてJ-WAVEを聴いていたら交通情報で故チック・コリア氏のテーマが流れて驚いた。
J-WAVE(81.3FM)の1988年の開局当初から2004年3月まで「J-WAVE TRAFFIC INFORMATION(交通情報)」で使用されていたのがこのチックのBGMだ。彼を偲んで2021年2月15日(月)から2月21日(日)までの期間限定で復活とのこと。当時、交通情報にオリジナルのBGMを付けたのはJ-WAVEが初めてだそうで、この曲もチックの描き下ろし。なお現在流れているテーマはチックとは縁の深い、あの小曽根真氏の作品とのこと。
1988年のチックといえば、エレクトリックバンドの全盛期であり、名盤「Eye of the Beholder」がリリースされた年だ。
小さな牛のマスコットが可愛い(表面の少女の足元にもある)
30数年経った今でもその素晴らしさは色褪せない。この頃はシンセリードはおそらくTX-816(※)とSynclavierのハイブリッドサウンドではないかと思う。本アルバムのタイトル曲で使われているシンセリード音は、ピンポン球が跳ねさせたときの音をサンプリングしてアタック音にブレンドしてたってチックがインタビューで言っていた記憶がある。「The One Step」や「King Cockroach」でも使われていたメジャー7thコード平行移動のイントロが印象的。これ確か耳コピしてMIDIデータ作った記憶があるけど、どこかに保存してあるはず。
ところで「TRAFFIC~」のBGMはおそらく一人多重録音(古)によるものと思われる。出だしのシンセのシーケンス風フレーズ(ピンポン球アタック付き)に、シモンズみたいなエレクトリカルなサウンドのリズムパートが加わり、エレクトリックバンドでも使っていたFM系のリード、シンセベース。シンセブラスのリフ、そしてアコピという編成である。
イントロのシーケンスは拍頭のテーマの出だしから逆算しないとわからない複雑な譜割りだった。こんな感じ。
これおそらくチックお得意の両手のコンビネーションでリアルタイムに打ち込んだフレーズであると思われるが、もしクオンタイズしてなかったら恐るべきタイム感である(してなさそう・・)。
テーマコード進行はチックがよく使うベース順次上昇進行
-Ebm9 | Db2(onF) | Gb | Ab F7(onA) |Bbm9 | Abm7 Db7 |Gb | ~~
※Db2=Dbadd9
Synclavierを核に、TX816などのFMサウンドで構成されているように聞こえるが、おそらく全編に渡りクオンタイズなんて邪道なものは使ってないんだろうなあ・・非常にシャープでクールな演奏ですね。この頃のライブではYAMAHA SY-88/99やKurzweilなども使用していたみたい。
なおピアノソロの直前のメカニカルなシンセフレーズもおそらくは左右の手のコンビネーションと思われる。片手だけでも弾けなくはないが、アクセントがどうもそのように聞こえる(緑の部分がおそらくLH)
上図3~4小節目のアウトフレーズは半端ない。GM7-Am7(onD)的なアプローチ?
※)YAMAHA TX-816 : DX-7が8台分マウントされている音源モジュール
交通情報にチックを採用したのはJ-WAVEの英断だったなあ、小曽根氏には申し訳ないのだが、ずっとこのBGMを使ってほしいくらいだ。
蛇足【The One Stepのコード進行】メジャー7thの平行移動と順次上昇
| CM7 | BbM7 | AbM7 |GbM7 |
| Dm11 | Dm11 | Dm11 |Dm11 G7|
| C(onE) FM7 | D(onF#) C(onG) | E7#9(onG#) Am7 | BbM7 A7(#9) |
| Dm9 Ebdim |2/4 Em7 | 4/4 Fm11 | Fm11 |
| GM7 | FM7 | EbM7 | DbM7 |
|Eb F |F | Ab Bb C |C25 |
※C25=Cadd9 no 3rd
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