The Mad Hatter / Chick Corea


The Mad Hatterhttp://www.amazon.co.jp/exec/obidos/asin/b0000046qx/pathensblog-22/ref=nosim“The Mad Hatter

  • アーティスト: Chick Corea
  • 出版社/メーカー: Universal Japan
  • 発売日: 1993/11/16
  • メディア: CD


L.キャロルの『不思議の国のアリス』をモチーフにしたコンセプト・アルバム。

ミニモーグ、ポリ・モーグ、モーグ15、アープオデッセイ、オバーハイム8ボイス、

等々を駆使したシンセサイザーの多重録音による幻想的なオープニング、

バルトーク風ピアノ六重奏、そしてバリバリの4ビート、といった非常にバラエティー

あふれる展開。

4リズム、5弦(2vln,2vla,cello)、ホーン・セクション(3tp,tb,sax)の大所帯を

纏め上げる緻密なアレンジ、シンセのオーバーダブ、ゲイル・モラン(チックの奥方)

の正確無比なボーカル等々、ジャズの枠を超えたクリエーティビティーの塊のような傑作。

斬新なコード進行の4ビート・ナンバー「ハンプティ・ダンプティ」のスティーブ・ガッド(ds)、

ジョー・ファレル(sax)、エディー・ゴメス(bs)とのコール&レスポンス、ラストの

「ザ・マッド・ハッター・ラプソディ」のハービー・ハンコック(ゲストで参加:ローズエレピ)の

ソロが特にスリリング。同年に発表した「フレンズ」も同様だが、ドラムのスティーブ・ガッド

の存在なくしてはこのアルバムは存在しなかったに違いない。ちなみにチック自身、実は

パーカッショニストでもあるのは有名な話だが、ガッドのリズム・アレンジに関しては100

パーセントお任せで演奏には一切注文をつけることは無かったそうだ

(これは他のアルバムでも同様とのこと)。

チックのドラミングは「スリー・カルテッツ(+4)」のボーナストラック「コンファメーション」

で聴くことができる。この曲はチックとマイケル・ブレッカー(サックス)のデュオだが、

実はレコーディングの空き時間に二人が遊び半分でセッションしていたところ、それを

エンジニアがこっそり録音していたものらしい。ということで音色はガッド・チューニング。

でも叩いているのは実はチックという非常にレアなトラックである。

ラストを飾るアルバム・タイトル曲「ザ・マッド・ハッター・ラプソディ」は10分あまりの力作。

メイン・テーマはドミナント・モーション中心だが上に載る3連系リズムを多用したメロディー

とアレンジの構築美は必聴。チックのミニモーグ、ハービー・ハンコックのローズによる

超絶ソロが繰り広げられる。

ソロのコード進行は実はずーっと「(Fm7-Bb7)-(Eb-Ab)-(Am7b5-D7)-(Gm7-Gb7)」

という4小節の繰り返しなのだが、信じられないくらいに次から次と名フレーズが飛び出してくる。

チックのソロは相変わらずかっこいいが、ハンコックのソロはスゴすぎる。

いわゆる常套フレーズはほぼ皆無。洪水の如く湧き出る超絶フレーズ・・とにかくカッコ良すぎ。

後半ラテンチックな曲想に転じて現れるミニモーグのハモリ・フレーズと自身のソロのコミカルな

掛け合い(ミニモーグで3回ダビングしていると思われる)の後、ストリングスセクションをバック

にチックのミニモーグが神秘的なソロを歌い上げたかと思ったら、アルバム前半に出てくるアリス

のテーマをゲイル・モラン歌い上げるという全く予期せぬ展開に鳥肌。さらにブラスセクションが

加わりフィナーレへ・・・こうして「不思議の国」の物語は幕を閉じるのであった

・・・・いやーホント名曲です。

■シンセ音色

80年代DX-7の出現までは、基本的にチックのシンセ・ソロといえばミニモーグ中心。

はっきりいってチックのシンセ音色は今も昔もセンスが良いとは思えないのであるが、演奏に

関してはさすがオンリーワンの個性を持っているといえる。

高度なペンタトニックの解釈とクセのある運指、そして鍵盤上を両手が交互に舞う独特

のフレージング、ベンド・モジューレーションワザ等々。数多くの歴史的なシンセ・プレイ

を残している。チックのベンドワザはヤン・ハマーのようなギタータイプではない。

管楽器のシェイクを想起させる深めのモジュレーション、トランペット系のベンディング

を多用するのがチックの特徴。